人の死が関連する事件や事故など、心理的瑕疵がある物件を事故物件と呼びます。事故物件を売却する場合、気になるのが売却価格への影響です。

一般的に、事故物件を売却する場合、通常の物件よりも売却価格の相場が低くなる傾向があります。心理的瑕疵の原因によっても売却価格の下げ幅は変わります。では、どれぐらい売却価格が下がってしまうのでしょうか。

この記事では、事故物件の売却相場の確認方法や相場を決める要素について解説します。

事故物件の売却相場

事故物件の判断基準は、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」に定められています。ガイドラインによると、自然死や不慮の事故以外で亡くなったケースや、特殊清掃やリフォームが必要になるケースは事故物件と判断されます。

事故物件の売却相場は、心理的瑕疵の理由によっても変わります。ここでは、心理的瑕疵の内容別の売却相場を解説します。

殺人があった物件の場合

殺人があった物件の場合、通常よりも売却相場が3~5割ほど下がります。とくに、報道で大きく報じられるほどの事件であれば、さらに売却価格が低くなることもあるでしょう。

自然死のケースと大きく違うのは、殺人事件があった場所としてインターネット上に掲載されてしまうという点です。殺人があった物件の場合、世間の記憶や噂が長期間消えないため、事故物件の中でも売却価格が大きく下がる傾向があります。

自殺があった物件の場合

自殺があった物件の場合、通常の売却相場よりも2~3割ほど低くなります。

住居内だけでなく、専有部分が関係していれば自殺があった物件として告知義務が発生します。たとえば、マンションのベランダから共有部分に飛び降りたケースや、別の部屋から飛び降りた人がベランダなどの専有部分に落下した場合です。

病院へ搬送後に亡くなった場合については、ガイドラインには定められていません。しかし、原因が物件内の自殺であった場合は心理的瑕疵があると判断されることがあります。

自殺があった物件は殺人の次に心理的瑕疵が強い傾向があり、敬遠されやすい物件です。

自然死や孤独死があった物件の場合

自然死があった物件は、原則として事故物件に該当しません。ただし、自然死であっても特殊清掃やリフォームが必要になるケースや、孤独死の場合は事故物件と判断されます。事故物件と判断された場合、売却相場は通常よりも1~2割ほど低くなります。

孤独死の場合は、発見が早ければ自然死と扱われて事故物件にならないケースもあります。ただし、ガイドラインには、亡くなってから何日後までが自然死なのかという決まりはないので、判断に迷う場合は不動産会社に相談しましょう。

自然死や孤独死があった物件は、殺人や自殺があった物件とは異なり、心理的瑕疵は軽微であると判断され、相場も下がりにくい傾向があります。

事故物件の売却相場を確認する方法

事故物件の売却相場を確認するためには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、事故物件の売却相場を調べる方法を3つ紹介します。

不動産取引情報提供サイトを利用する

「不動産取引情報提供サイト」とは、売却したい物件情報を入力すると、近い条件の物件の成約価格を知ることができるサイトです。

売却したい事故物件がある地域や築年数、間取りなどの条件を指定すると、似た物件の不動産売買実績を見られます。不動産取引情報提供サイトで確認できるのは一般的な物件の売却価格です。事故物件の場合は、心理的瑕疵の内容によって相場が低くなるので、減額の割合を考慮して売却価格の相場を確認しましょう。

一括査定サイトを利用する

不動産の一括査定サイトを活用しても、売却価格の相場を確認することができます。売りたい物件の地域や種別などを入力することで、複数社にまとめて査定を依頼できます。

売却したい物件の買取価格の幅がわかるので、査定価格をもとに平均値も想定できます。また、複数の不動産業者へ一括で査定依頼できるため、条件のよい不動産業者も知ることができ、効率的です。ただし、不動産業者によっては事故物件の買取に対応していないこともあります。

業者に無料査定を依頼する

事故物件の買取や仲介に対応している業者に無料査定を依頼すると、より正確な売却額を確認できます。また、事故物件専門の不動産業者であれば、特殊清掃や遺品整理の手配もまとめて対応してくれるので、売却以外にかかる手間も省けます。

事故物件の売却には、仲介と買取の2パターンがありますが、それぞれ次のような違いがあります。

仲介の場合、売却価格は最終的に売主が決めます。そのため、査定額よりも高く売却できる可能性がある一方で、買主から値下げ交渉を受けることもあります。また、買主が決まるまでに時間がかかることもデメリットです。

一方、買取では、買取業者が売主から直接購入するため、提示された査定額が売却価格になります。一般的な売却相場よりも買取額が低くなることが多いですが、早期に事故物件を売却できるというメリットがあります。

事故物件の売却相場が決まる要素

事故物件の売却価格は、さまざまな要素によって決まります。ここでは、事故物件の売却価格を決定する要素について解説します。

物件の立地

通常の物件同様、事故物件でも立地によって売却価格は大きく変わります。一般的には、東京23区や大阪の繁華街などの人気のエリアは買主が見つかりやすいため、査定価格は上がります。

また、人気エリアではなくても、交通の便がよい、大学が近い、近隣にコンビニなどの飲食店が多いなどのメリットがあると査定額は高くなります。一方、周辺が山や田畑に囲まれているようなエリアは、査定額が低くなる傾向にあるでしょう。

物件の間取りや設備

物件の間取りや設備も売却価格を決定する要素の一つです。

ターゲットとする買主の家族構成によって、物件に対するニーズは異なります。例えば、家族に高齢者がいる場合は、バリアフリー対応や開放的な間取りが求められます。また、学生がいる家庭の場合は、プライバシーが守れる個室があると買主のニーズを満たすことができ、査定価格が高くなります。

また、内装の状態や設備も大切な要素です。水回りの設備が最新であれば、査定価格は高くなるでしょう。事故物件でも、物件自体の間取りや設備の条件がよければ、売却価格も上がります。

物件の築年数

物件の築年数も売却価格を大きく左右します。不動産の価値は、築年数の経過にともない下がります。築年数が1~5年の築浅物件は、築年数10年以上の物件に比べると評価が高くなります。

築浅物件には、新築感が残っていることや、リフォームの必要が少ない、外壁補修が不要といいたメリットがあります。しかし、築年数が長くなると外観や設備の老朽化、居住性の悪さなどもあり、売却価格が下がる傾向があります。

購入者の目途

事故物件の購入者の目途があるかどうかも大きな査定ポイントです。

買主が、アパートや借家として不動産を活用するために事故物件を所有する目的であれば、購入者の目途がつくでしょう。賃貸用マンションやアパート、借家が事故物件になったとしても、需要が期待できる場合であれば、売却相場が上がる要素になります。

一方で、いかなる工夫をしても買主の目途がつかない物件は、査定額は下がります。所有しているだけで、税金や維持費がかかるので、注意が必要です。

まとめ

事故物件の売却価格の相場は、通常物件と比べると低くなる傾向にあります。しかし、条件によっては、相場より高い価格で売ることも可能です。

高く売るためにリフォーム代など現状復帰のための費用をかけてしまうと、かえって赤字になるリスクもあります。

事故物件の売却のためには、適切な相場を知って信頼できる業者に依頼することが大切です。