住宅ローンの支払いが残っている住宅が訳あり物件になった場合も、買主を見つければ売却できます。ただし、物件の売却にはいくつかの条件があるため、必ず売却できるとは限りません。

この記事では、残債がある訳あり物件を売却する際に覚えておきたいこと、残債に売却金額が足りていない場合の対応法を解説します。記事の後半では、残債がある訳あり物件をスムーズに売却する方法も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

残債がある訳あり物件でも売却可能

住宅ローンの残債がある物件が、訳あり物件になってしまった場合でも、売却自体は可能です。

ただし、ローンを支払わなくていいというわけではなく、ローンの残債を支払えるだけのお金が必要になります。住宅ローンの残債がある物件には、抵当権が付いていることが一般的だからです。抵当権に関しては後ほど詳しく解説します。

残債がある訳あり物件を売却する際に覚えておきたいこと

住宅ローンの残っている訳あり物件を売却する際は、以下の4点に注意しましょう。

・抵当権の抹消が必要
・アンダーローンの場合は通常どおりに売却可能
・オーバーローンの場合は任意売却が必要
・訳あり物件と見なされるケースとは

抵当権の抹消が必要

住宅ローンを組む際、お金を貸す金融機関は確実にお金を返してもらえるかわからないので、住宅を担保に取ります。これを抵当権といいます。

抵当権は、ローンを完済すれば抹消するのですが、抵当権が残っているうちは住宅を売れません。残債を完済できる見込みがなければ、訳あり物件の売却は不可能です。

アンダーローンの場合は通常通りに売却可能

アンダーローンとは、物件売却額の方が残債額を超えている状態です。たとえば、住宅ローンの残債が1,000万円で、売却額が1,200万円だった場合、差額の200万円を手にして、訳あり物件を完全に売却できます。

アンダーローンの場合は、売却額だけで残債分を賄えるので、抵当権は抹消され、通常の物件と同じように売却可能です。売却で残ったお金は、引越し代や新居の購入費用など、好きなように使えます。

ただし、訳あり物件を売却する場合、査定額が周辺相場よりも低くなる傾向にあるため、下記で説明するオーバーローンになる可能性が高くなります。

オーバーローンの場合は任意売却が必要

オーバーローンとは、残債が売却額を超えている状態で、通常の方法では売却できません。とくに、住宅を購入して早期に訳あり物件になった場合、オーバーローンになる可能性が高いです。

訳あり物件は、よほどの人気エリアの物件でない限り価値が低下して、売却額が下がる傾向にあります。オーバーローンの住宅を売却するには、金融機関をはじめとした借り入れ先から許可を得る「任意売却」という方法を用います。

借り入れ先からしてみれば、貸したお金が確実に返ってくれば問題ありません。残債から売却額を引いた不足分を用意できれば、許可を得やすくなります。

また、ローンを完済できない場合でも、借り入れ先に状況を説明して許可を得れば、売却後に残債を支払い続ける方法があります。

訳あり物件と見なされるケースとは

訳あり物件は不動産価値が下がり、オーバーローンに陥りやすくなりますが、訳あり物件と判断されるケースは以下のとおりです。

心理的瑕疵物件 居住する際に心理的な抵抗感が生じる物件 →過去に事故、自殺、殺人が発生した物件など
環境的瑕疵物件 周辺環境による不快感が生じる物件 →墓地や葬儀場のある物件、線路が近く騒音に悩まされる物件など
法的瑕疵物件 都市計画法や建築基準法といった法律を遵守できていない物件

それぞれの特徴を把握して、自分の持ち家が訳あり物件に該当するか照らし合わせてみましょう。自分では判断できない場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。

残債に売却金額が足りていない場合の対応法

残債に売却金額が足りていない場合、何かしらの対策を打って返済の目処を立てないと、借り入れ先からの許可を得にくくなります。ここでは、以下3つの対処法を解説します。

・貯金を使って残債を返済する
・ほかの金融機関から融資を受ける
・知人や家族から不足分を借りる

貯金を使って残債を返済する

売却額だけで賄えない分を貯金から補填すれば、問題なく任意売却が可能です。たとえば、売却額を差し引いた残債300万円分を貯金から出せれば、金融機関からの許可が降りるでしょう。基本的に貸した側は、お金が全額確実に返ってくればよいので、集金方法は問いません。

他の金融機関から融資を受ける

売却額と貯金だけで残債を完済できない場合は、ほかの銀行から融資を受けるという方法があります。ただし、借り入れができたとしても、利子によって売却後の生活を圧迫する原因になるため、返済期間や金利は注意すべきポイントです。

また、住宅ローンを完済していない状態で売却しようとする行為は、リスクのある債務者だと敬遠されてしまう可能性があります。

知人や家族から不足分を借りる

知人や家族、親戚などに事情を説明して、残債に満たないお金を借りる方法もあります。気をつけたいのが、1月1日から12月31日の1年間でもらった合計金額が110万円を超えると、贈与税が発生する点です。

どうしても一括で高額のお金を借りる場合は、借用書を適切な金利で作成しておくと贈与扱いにならず、贈与税が発生しなくなります。ただし、あまりにも低金利の借用書を作るなど、適当な対応をしていると、税務署から認めてもらえないので注意しましょう。

残債がある訳あり物件をスムーズに売却する方法

通常の物件であれば、売却完了までスムーズに進むかもしれませんが、残債があり、なおかつ訳あり物件ともなると、多くの制約を受けます。できるだけスムーズに訳あり物件を売却するために、以下2つの方法を覚えておきましょう。

・訳あり物件専門の買取業者を活用する
・任意売却の実績がある不動産会社を活用する

訳あり物件専門の買取業者を活用する

訳あり物件は、人の死や法的な問題が関係していることから、一般的な不動産会社では買い取ってもらえない場合が多いです。物件価値が低いだけでなく、ノウハウが足りずに扱いづらいことから、相場よりもはるかに安い値段で見積もられるケースもあります。

そこでおすすめなのが、訳あり物件専門の買取業者です。抵当権に関する交渉や物件の再生ノウハウに富んでいるため、残債がある訳あり物件でも、しっかり買い取ってもらえる可能性が高まります。

業者によってさまざまな査定額が付くので、少しでも高い値段で売却したい方は、複数の業者に見積もりを依頼しましょう。

任意売却の実績がある不動産会社を活用する

不動産会社によっては任意売却のノウハウが少なく、スムーズに買い取ってもらえない場合があります。

最初から任意売却の実績がある不動産会社を活用することで、売却までスムーズに行える可能性があるので、検討してみましょう。こちらも複数の業者に見積もり依頼を出すことで、売却価格の高い業者を選べます。

まとめ

訳あり物件は、残債がある状態でも売却可能です。ただし、抵当権の抹消が必要であることや、スムーズな売却は、残債よりも売却額の方が大きいアンダーローンの場合にかぎる、などの注意点があります。

また、売却額だけではローンを完済できないオーバーローンの状態では、任意売却が必要です。借り入れ先から売却の許可をもらえるよう、貯金やほかの金融機関からの借り入れ、知人や家族からの資金調達で、不足分を補いましょう。

一般の不動産業者では、訳あり物件に関するノウハウが少なく、スムーズに売却まで漕ぎ着けない可能性があります。訳あり物件専門の買取業者や、任意売却の実績がある不動産会社を活用するのがおすすめです。